”靴磨き”という文化が一般に浸透し始めて、早数年。
昨今では、その腕前を競うコンペティションが世界各地で開催されるようになりました。
嬉しい事に我々日本人は靴磨き業界では世界をリードする存在となっており、すでに2人もの世界チャンピオンが生まれています。
もちろん日本国内でも靴磨き大会は幾度も開催され、”本当に実力のある人”がわかりやすくなってきたのではないでしょうか。
その中でもひときわ目立つ活躍をしているのが
の2大靴磨き店。というのは議論の余地なしかと思います。
東のブリフトアッシュに、西のTWTG。
世界で初めての靴磨き世界チャンピオンであり、日本での靴磨き文化を押し上げた長谷川裕也氏が立ち上げたのがBrift H。
(札幌にも林田さんが運営する姉妹店The Lounge by Brift Hがあります!)
銀座三越で開催されている靴磨き選手権で3連覇し、いまもっとも勢いのある靴磨き店が石見豪氏が率いるTWTG(THE WAY THINGS GO)といったところでしょうか。
靴磨き好きが集まるバーで「どちらかが優れているのか?」なんて話題を出すと朝まで議論が終わらないとかなんとか…。(適当なことを言いました。)
靴磨き職人が作り出した2つの靴クリーム
さて、そんな2大靴磨き店ですが、どちらもオリジナルの靴クリームを販売しています。
Brift Hは「The Cream」を2014年に発売。
TWTGは「Cream」を2021年に発売しました。
長谷川氏(Brift H)も石見氏(TWTG)もその豊富な靴磨きの経験と、皮革への情熱は凄まじいらしく、相当に長い時間をかけて開発したとのことですから、一般的に流通している靴クリームとはまた違った強さがありそうです。
本ブログ記事では、これまで数多のシューケアグッズを試しまくってきた筆者がこの2大靴磨き店のオリジナル靴クリームについて比較していこうと思います。
はてさて、どんな結果になるのか。
自分自身も楽しみながら進めていきます。笑
ちなみに私はお二人と面識がないため、一人のシューケアマニアとしてバイアス一切なしの比較となります。
パッケージ・見た目・開発ストーリー
Brift H(The Cream):ゴールドとブラックがキーカラー
まずはBrift Hのザ・クリームから。
ゴールドとブラックをキーカラーとし、オシャレでちょっと楽しげなパッケージデザインとなっています。
蓋は鏡のようなミラーゴールド、瓶は遮光性のあるダークブラウンカラーです。
サスティナビリティに配慮し、クリームだけの充填サービスも行っているんだとか。
Brift H が何万足も磨いて辿り着いたクリームです。
革の寿命を延ばし、上品な光沢としなやかさを生み出す為に作りました。化粧品会社と共同で開発し、人間の肌に塗っても問題ない程、良い成分で作っています。瓶には遮光性があり、品質を維持できるものをこだわって選びました。
素手で温めながら塗り込んでいくと、より効果が得られます。
※起毛素材や布素材には使えません。
Brift H The Creamの特徴
- 化粧品会社と合同ではじめて1から作り始めたオリジナルクリーム
- 革へ良く浸み込み、上品な光沢が出て、鏡面磨きがしやすい
- 革への栄養分にこだわり、人間の肌に使うものと同じ原料
- スクアラン、ホホバオイル、シアバター、オリーブオイル、ラノリン、ビーズワックス、カルナバロウなど20種類以上を使用
- 伸びが良く、革が柔らかくなってくる効果がある
- ブラッシングだけでも上品なツヤ、鏡面磨きがしやすい
- 良い靴を長く愛用したい方へ自信をもってオススメしたい
私の知る限り、史上初の靴磨き職人から産み出された一般ユーザーでも使える靴クリーム。
その使いやすさからか、靴好きのSNSでもよく見かけます。
TWTG(Cream):白とシャンパンゴールドがキーカラー
そしてこちらがTWTGのCream。
石見豪氏がデザインされた遊び心のあるラベルは白で統一。(twtgって入ってるのわかりますか)
ナチュラル以外は遮光のあるダークブラウンカラーの瓶を採用しています。
The Creamが原色ならこちらは淡色のようなイメージです。
水分比率を60%以上に設定した、浸透性の高い非常に柔らかいクリームです。
乳化性ですが、ロウ分が最後に浮き出るように処方しているので、ブラッシングによりしっかりとした艶が出ます。
乾拭きの際も革表面がサラっと滑らかに仕上がり、ベタつきません。
指でクリームを伸ばした場合も、手を洗えば指に移った色が綺麗に落ちます。
TWTG Creamの特徴
- 自分たちの靴磨きがよりやりやすい靴クリーム
- クリームの60%以上が水分で出来ている
- テクスチャーが非常にやわらかく浸透性が高い
- 仕上がりはサラサラしており、べたつかないのが特徴
- 指についたクリームが水で洗えばすぐに取れるよう処方している
- 靴だけではなく、財布やカバンなどの小物にもオススメしたい
Brift HのThe Creamを使っていた現場から生まれた靴クリームというのは忘れてはいけないポイントのひとつかと思います。
主成分・価格など
Cream(TWTG) | The Cream(Brift H) | |
主成分 | ろう、油脂、有機溶剤、水 | 水、油脂、ろう |
量 | 50ml | 75ml |
価格(税込) | 2,530円 | 3,300円 |
1mlあたり | 約50円 | 約44円 |
カラー | 全4色 | 全6色 |
TWTGはろう、油脂、有機溶剤、水の順に記載があります。
Brift Hは水、油脂、ロウの順番。
この成分表示にはルールがあり、配合量が多い順番に表示しなければなりません。
その観点からいくとBrift Hの方が水分量が多いのかな?
とはいうものの、長谷川氏がThe Creamの紹介ブログ記事で指摘している通り、すべての成分を記載していないので成分表示では一概に比較できないですね。
クリームの質感・匂い
Brift H(The Cream):フワフワ感があり、ほぼ無臭
Brift Hの靴クリーム。
指にとった時にまず感じるのはフワフワ感、それと微細な粒子感です。(ロウ分だそうで)
指ですりつぶすと最初だけ気持ち引っかかり感がありますが、すぐにスッと溶けて、ハンドクリームのように手に吸い込まれていきます。
香りについてはほぼ無臭といって良く、靴クリームの香りが苦手な人でも全く問題なく使えます。
TWTG(Cream):水分の多さを感じるが匂いあり
TWTGの靴クリーム。
テクスチャーとしては「一般的な靴クリームとデリケートクリームの中間」です。
指で潰していくと水々しく伸びた後、気持ちヌルっとした膜が張り、最後は引っかかるような感触に。
香りはやや強めの溶剤系の香りがするので、苦手な人は苦手かもしれません。
塗り心地、塗った直後の状態
Brift H(The Cream):軽やかな塗り心地・仕上がりはシットリ
ブリフトアッシュのThe Creamは、皮革につけるとスッと伸びます。
ロウ分がついていない部分には一時的に濡れたようなシミができますが乾いたら消えます。
伸びは非常に良いですが、浸透力も高いため、何度も塗りこむ必要があります。
仕上がりはシットリとしており、ツヤはほとんどありません。
TWTG(Cream):水彩絵の具のような塗り心地・仕上がりはサラサラ
THE WAY THINGS GOの靴クリームの塗り心地は、デリケートクリームあるいは水彩絵の具のように伸びやかです。
薄く塗りこんだ直後は、ややシットリとしますが、その後は薄い膜が張るような仕上がり。
また、ブラッシングする前から軽い光沢感が出てきました。
ブラッシング後の艶・印象
Brift H(The Cream):控えめなツヤ感
The Cream(ブリフトアッシュ)を塗った後にブラッシングをしました。
ブラシの掛け心地は非常に軽やか。
ブラッシング後には控えめなツヤが生まれました。
人によってはここからワックスやポリッシュを使ったシューシャインをしたいと感じる方もいると思います。
TWTG(Cream):ロウ分を感じるツヤ感
靴クリーム(TWTG)を塗りこんだ革靴にブラッシングします。
はじめは気持ち引っかかるような感触ですが、すぐにサラサラとしたものに変わります。
元々あったツヤ感はより強まり、これだけでも十分な仕上がりとなりました。
仕上がりの特徴は?
Brift H(The Cream):銀面の特徴を残した仕上がり
こちらが全体的にバフィングも行ったザ・クリーム(Brift H)の革靴です。
”全体的に上品なツヤが出ていながら、銀面の特徴はそのまま”な仕上がりと言えます。
TWTG(Cream):ごく薄いワックス層が張ったようなツヤ感
そしてこちらがCream(TWTG)
同様に全体的にバフィングもしています。
”アッパー全体にベールのようにツヤの膜があり、銀面はワックス分でやや埋めて”ある印象。
艶感の違いは大きい
二つのクリームで仕上げた革靴を並べてみます。
パッと見はそこまで差がありませんね。笑
しかし、左右で見比べたときのツヤ感や、触ったときの感触には明確に差があります。
誤解を承知で伝えるならば”TWTG Creamの仕上がりは、サフィールノワールのクレムを使ったときのようなツヤ感に近い“と言えます。
一方で”Brift H The Creamの仕上がりは、この後にワックスやポリッシュをかける前提の仕上がり“と言っていいかもしれません。
アップで見ると銀面の仕上がりの差がよりわかりやすい。
TWTGの靴クリームで仕上げた左側、Brift Hの靴クリームで仕上げた右側。
銀面の模様などに注目してもらえれば。
こう比較すると2つのクリームが求めている方向性について見えてきますね。
ふたつとも靴磨き用ですが、その仕上がりの着地については明確に異なります。
次にまとめたいと思います。
2大靴磨き店オリジナル靴クリームのまとめ
ということで本ブログ記事では、東西の2大靴磨き店「Brift H(ブリフトアッシュ)」と「TWTG(ザ ウェイ シングス ゴー)」が独自に開発した靴クリームを徹底比較してみました。
シューケアマニアの立場としてまとめるなら下記かなと。
TWTG(Cream) | Brift H(The Cream) | |
価格 | 3000円以下(やや高め) | 3000円以上(高い) |
香り | 溶剤の香りあり | ほぼ無臭 |
伸び、浸透性 | 水彩絵の具のように滑らかな伸び | フワフワとしておりスッと伸びる |
艶の仕上がり | そのまま履ける程度のツヤ感 | 素仕上げに近いツヤ感 |
カラバリ | 今後増えていく(現4色) | 充実している(現11色) |
私の個人的な感想としては、
- Brift H(The Cream)は、後工程にワックスやポリッシュを使った磨きが前提の靴クリーム。
- TWTG(Cream)は、靴クリーム単体で磨きを完結できる靴クリーム。
といったイメージを持ちました。
補足すると、The Creamは性能がマイルドなのでライニングレザーや革靴以外などにも使いやすいですし、TWTG Creamはワックスやポリッシュを使ってさらにツヤ感を強めやすいという点があります。
どちらも最高峰の靴磨き職人が長い時間をかけて開発したとあって、非常に素晴らしい靴クリームなのは間違いありません。(各店舗でも靴磨き職人の方たちが使用していますしね)
今回はナチュラルでの比較になりましたが、近いうちにはカラー付きも試してみたいところです。
そんな訳で気になった方は、世界最高峰の靴磨き職人たちと同じアイテムをぜひ一度試してみてはいかが?
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