先日誰もが認める靴磨きレジェンド、長谷川裕也さんのセミナーに足を運んできました。
今年でそのキャリアは20年。世界で初めての靴磨きチャンピオンであり、国内でもっとも成功した靴磨き店を経営されている方です。近年では靴磨きを文化とすべく日本一の靴磨き職人を決める靴磨き選手権大会を開催されたり、海外の幾多のショップに招かれたり、はたまたテレビ番組でもマス層に向けて広く発信活動をされたりするなど、まさに「日本を代表する靴磨き職人」です。
これまで私自身は直接の関わりはなかったのですが「革靴」であったり「靴磨き」というワードで私の革靴ライフに大きな影響を与えてくれた張本人である方がついに靴磨き職人を引退する。その思いやこれまでの道のり、さらには直接靴磨きテクニックを習えるイベントが開催されるということで、今年1番に楽しみにしていたイベントです。
本ブログ記事では、そのセミナーの様子を余すとこなくご紹介していきたいと思います。
イベント概要
まずはこのイベントの概要を簡単にご紹介します。
札幌の商工会議所の生活関連商業部会/健康・文化部会の方がBrift H SAPPOROのお客さんだった縁もあり、遡る事約5年前から企画が練られ開催にいたっていました。
第一部では長谷川さんのキャリアスタートからこれまで、そして今後についてを1時間程度。
そして第二部では2時間弱ほどかけて誰でも簡単に革靴を光らせる技術の一部を伝授。
という2段構えの靴好き、靴磨き好きにはたまらない濃密な3時間が用意されていました。
https://www.sapporo-cci.or.jp/web/events/details/post_261.html
- イベント名 靴磨き世界チャンピオン 長谷川裕也 “The Last of Shoeshiner”
- 開催日 2024年02月24日(土) 17:00-20:00
- 場所 北海道経済センター 7階 第5会議室
- 参加費 6,000円(税込)
- 講師 長谷川 裕也(はせがわゆうや)株式会社BOOT BLACK JAPAN 代表 ※2017年世界大会優勝者
- 司会 林田 直樹(はやしだなおき)Brift H SAPPORO 代表 ※2023年世界大会優勝者
- 内容:今年の4月30日をもって靴磨き職人を引退し「靴磨き家」に転身する長谷川裕也氏の、靴磨き職人としての最後のイベントを開催。
- 【第一部】トークイベント「長谷川裕也の20年の歩みとこれから」
- 【第二部】ワークショップ「長谷川直伝の靴磨きワークショップ」
ミウラと長谷川さんの出会い
自分のブログ記事を見返すと一番初めの出会いは2017年。
当時はThe Lounge by Brift Hというインショップで行われた靴磨き教室でした。
Brift Hには「オシャレな靴磨き集団」というイメージを持っていたところに、ちょうど夫婦で靴磨きと革靴にどっぷりハマり始めたタイミングで開催されたということもあって、とても興奮して参加したことを覚えています。
そしてもっとも驚いたのはその技術。妻がなかなかうまく磨けず、当時のH店長に手伝ってもらったのですが、見たことがないほどに光り輝き始めたのです。革靴ってこんなにも輝いてしまうのかとは本当に驚きました。
靴磨き世界チャンピオンの記事
そして同年、Brift H長谷川さんがなんと世界で初めて開催された靴磨き世界大会、The World Championship Of Shoe Shiningで優勝されたという情報を目にして、すぐにインターネット上の情報をかき集めてブログ記事で公開しました。
まさか日本人が西欧で生まれた革靴を磨くという大会で優勝してしまうとは・・・まったく面識がないにもかかわらずとても嬉しい気持ちになったことを今でも覚えています。
元祖靴磨きASMR動画
少し前、ASMRと呼ばれる動画が流行りました。動画の中の音がまるで耳の傍で鳴っているような、音の輪郭を感じ取れる動画のことで、人々が作業しているシーンを切り取ったような作品がとくに人気でした。(料理とか)
そんなASMRの靴磨きの元祖といえるのがGarra Styleというプロジェクトのひとつとして公開された下記動画でした。
Garratyle – Shoe Shine / YOUTUBE
暖色ベースのなんだかオシャレな空間で、これまで見たことのないスタイリッシュな靴磨きが展開される。靴はどんどん綺麗になっていくその様子は一度見れば、いわゆる靴磨きの少年的なイメージが一掃されるほど。
実はこの動画の登場人物こそ、長谷川裕也さんだったのでした!(ちなみに靴はステファノベーメルのリアルロシアンカーフ製なんだとか)
長谷川さんの半生
いよいよ、【第一部】トークイベント「長谷川裕也の20年の歩みとこれから」が始まります。
会場となった札幌商工会議所の5F会議室は30人強ほどの参加者でびっしりと埋まっていました。ほとんどが男性でしたが、一部お子さんや女性の方などの姿もあり、靴磨きという文化の広がりを改めて感じた次第。
第一部の内容は「長谷川裕也の20年の歩みとこれから」ということで、長谷川さんが靴磨きを始めたきっかけからスタート。今回は商工会議所との共催ということで、その年その年の出来事に加え、靴磨き料金設定をポイントにビジネス的視点からの解説や苦労した点など、生々しい話を惜しみなく拝聴することができ、ひとりの社会人として、そして靴好き、靴磨き好きとしても非常に価値ある時間を過ごすことができました。
とくに靴磨きの価格設定の話は、「新しいビジネスを0から作り上げた話」とほぼイコールであり、サービスに対する値付けの難しさ、おもしろさ、そして人々の反応をリアルに知る事ができたのは大変勉強になりました。
中盤では北海道民が良く知る林田さんも登場。サービス開始時は500円だった料金が5倍の2500円になったタイミングだったんですね。
今では長谷川さんが磨く料金は1回1万円となっており、間違いなく国内でもっとも高額な靴磨き料金となっています。なぜ1万円なのか、その理由もしっかりとしたものがありました。
本当は色々とご紹介しようと思ってたくさんメモも取ったのですが、いざ記事にしようとすればするほど、この話は直接本人が話す場で聞くべきものだろうと思い、本当に概要だけのご紹介となっています。笑
靴磨き道の真意とは?
第一部の最後では、これまで「靴磨き職人」だった長谷川さんがなぜ「靴磨き家」を志しているのかという、誰もが気になる点に触れられて、私は非常に腑に落ちました。
現在の靴磨き業界には少し考えれば誰もが気づく問題点があります。
靴磨き文化をもっと広める。
これって靴磨きをビジネスとして考えたときに非常に危うい行為でもあります。
誰もが靴磨きに興味を持って、身近な存在になる。みんなが素晴らしい道具も購入することができ、さらに靴磨き技術すらも本や動画で簡単に学ぶことができる。
職人業というのはみんなができないからこそ価値あるものです。誰でもできないからその行為の対価として、お金が発生している訳ですから。
なので今後は「道」をつくる。靴磨きを芸術側に寄せていく。
ビジネスがカジュアル化し、革靴需要は明らかに減りました。それに合わせてクラシックなスーツ文化も衰退気味な昨今。今後はもっと減ってかもしれないし、遠い未来にはスーツは着物的な存在になってしまうかもしれない。そうなるともはや靴磨きはビジネスとして非常に矮小な存在になってしまう。
だけど「道」としてならどうか。
弓道や茶道、そして書道など、現在の生活様式には必須ではないにもかかわらず、いくつかの日本の芸術文化は、現代でも広く根付き愛される文化となっています。
靴を磨くという文化を芸術として、道として成り立たせる。そうすれば靴磨き文化は靴磨き道として、今後も需要が生まれ続けるはず。
これを確立するために「靴磨き職人」から「靴磨き家」に転身することにしたと。
私はこの話を聞いたときに、本当に夢を実現するタイプの企業家のお話を聞いているなあと思うと同時に、心から靴磨き業界のことを考えて考え続けている人なんだなと深く感動しました。
※なお、この段落については私が解釈した内容が一部含まれており、すべてのニュアンスが正確ではない可能性があります。
そんな訳で第二部では靴磨きを極めて男の最新靴磨きテクニックをご紹介していきたいと思います!!
ブログ内を検索する!