前回に引き続き、札幌で行われた靴磨き世界チャンピオン兼スーパーレジェンド長谷川裕也さんのセミナーの様子をお伝えします。
今回は第二部で行われた「長谷川裕也直伝の靴磨きワークショップ」となります。
事前に用意されていたのはBrift Hの赤いシューシャインクロス、汚れ落とし用ネル生地、THE CLEANER Soft THE CLEANER for MIRROR SHINE、THE CREAM 無色、THE WAX 無色、そして水に豚毛ブラシ、馬毛ブラシ。
Brift H SAPPORO店長、林田さんの「鏡面磨きをやったことある人―!?」に反応する前列側の方々。
いつの時代もどこの界隈でも前列ゾーンというのは熱意ある方々の専用席です。大学の講義と一緒。笑 実際最前列だと長谷川さんのデモンストレーションが目の前で観れるのでお得だったと思います。
持ち込んだのはコードバンのオールデン
どの靴を磨こうかな?と自分のシューズラックを眺めたとき、すぐに目についたのがこのアナトミカ別注のアンラインドコードバンのオールデン5610です。
アンラインドですし、我が街は雪が降るのですっかりとシーズンオフ感が強まったこいつを一足先にピッカピカにしてやろうという気持ちになりました。
STEP1 紐を外す。
まずは靴紐を外します。
素人のデイリーメンテナンスだと靴紐はつけたままですが、やはりプロの靴磨き家の指南ですね。
靴紐がついたままだとレースステイ部分で塗りムラができますし、とくに固い豚毛ブラシの工程で布製の靴紐にダメージが入ります。靴紐自体も染色されちゃうのもよくあるケースです。
以前、どこかの動画か記事で長谷川さんが「シュータンで元のレザーを確認する」といっていました。なのでシュータンにもガンガンクリームとか入れているのはイケてないシャイナーなんだとか・・・(記憶違いかも)
ともかく、自分の靴のシュータンを改めて観たときに非常に納得した記憶を思い出した次第。
STEP2 ほこりを落とす
このあたりから、長谷川裕也さんのいわゆる所作を生で観ることができ始めました。
何万足も磨いた経験から生まれたであろう美しい動きに会場の意識が集中します。よく林田さんが「長谷川さんはレベルが違う」と言っていたのですが一目でわかった(気になりました。)
実は一緒に参加していた友人Zと共に靴についたホコリやチリを馬毛ブラシで落としまくります。
ポイントはブラシが届きづらいシューステイまわり(羽根まわり)や、土踏まず部分をしっかりブラッシングすること。
そしてブラシは動かさず、靴を動かすことで疲れにくいそうです。普段意識していないポイントでしたが、一日に何十足も磨くプロの助言は納得感がありますね。
※友人Z:私の靴好き友人で、個人輸入したり、ノーザンプトンいったり、オボイストさんに会いに行ったりする仲。
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STEP3 汚れ落とし
汚れ落としのステップでは、まず細長くカットされたネル生地の巻き方からスタート。
靴磨き大会などでは定番の所作、動きを分解して解説いただきましたが・・・
今まで独学の巻き方でやってきたものですから、めちゃくちゃ苦労しました。笑
5-6回目のトライでようやく巻けました。
ちょっと複雑な巻き方なので、林田さんもサポートに入ります。
汚れ落としはミラクリが活躍!
事前にTHE CLEANERのソフトとミラクリが用意されていました。
靴磨きでの「汚れ」には2つの意味があり、1つは歩行時などについた汚れそのもの、2つめとして古い靴クリームやワックスのことを指しています。
つまり靴磨きの汚れ落としとはできうる限りアッパーレザーを無加工の状態に戻すことと同義な訳ですね。
汚れ落としは片足4~5回、毎回布の位置を変えて行います。
指先に小豆くらいの分量をとり、力をあまり入れず伸ばしながら汚れをぬぐい取っていきます。
コツはカカトからスタートすること。そうすることでどこまで汚れ落としを行ったか間違えづらくなりますし、クリーナー自体が強すぎないかなども目立たない場所で確認できるという寸法です。
アッパーレザー表面のツヤがなくなり全体的に白くなったら終了!
STEP4 靴クリームを塗る
次に靴クリームを塗り込み、革靴に栄養補給をします。
革靴の栄養とはずばり「水分」と「油分」を指します。靴クリームは乳化性と油性がありますが、素人が磨く場合はお好みで良いみたいです。
※油性クリームの代表製品はやはりサフィールノワールのクレム1925だそうで。
靴クリームは指に小豆くらいを取り、カカトから塗り込みを開始し全体で5から10回ほど行います。指のすべりが悪くなったらクリームをおかわりするイメージです。
また、スポット的に靴磨きをする際は無色で十分ですが、ずっと無色クリームを使うとクリームと同じ色、すなわち白くなってくる点は留意。
履き皺のバンプ部分はちょっと強めにマッサージするようにクリームを数回入れるのがコツ。
ジョッパーブーツはベルトにもクリームを塗り込む必要があるので、ちょっと大変。
STEP5 クリームをブラシで馴染ませる
靴クリームを塗り終わったら、豚毛ブラシでクリームをさらに馴染ませます。
コツは力を入れてしっかり擦ること。クリームを皮革に浸透させるイメージ。
履き皺がある場合は皺と同じ方向にブラッシングすることで、まんべんなくクリームをアッパーレザーに押し込むことができます。
多少ベタつきが残るくらいで完了となります。
STEP6 乾拭き
豚毛ブラッシングで靴クリームをまんべんなく革靴に押し込んだら、最後は柔らかいネル生地で乾拭きをして仕上げです。
ベタつきが取れ、この段階で磨く前より一段階グッと美しいツヤが出てきます。
私に配布された豚毛ブラシは黒い靴クリームに使われていたものでした。これまで私は割と細かく色ごとに靴ブラシを使い分けていたので実感はありませんでしたが、乾拭きをしてみると結構黒いクリームが布についてきました。
改めて、革靴用のブラシは分けて使わないといかんのだな~と思いました。笑
※染料じゃないのですぐ取れる程度のものです。
STEP7+8 ワックスを塗ってネル生地で磨く
このあたりでちょっと時間が押してきました。笑
長谷川さんも色々と考えを巡らせ・・・、急遽予定していた内容とは異なる「塗りから磨きまですべて布でやる鏡面磨き」を教えていただくこととなりました!
割とトラディショナルな手法ですが、最近長谷川さんが改めてその魅力に気が付いてハマっているんだとか。昨今の靴磨き鏡面磨きでは指でワックスを塗り込むのがなかば常識となっていますが、それよりも鏡面が上品に光る利点があるそうです。
やったことのない手法にワクワク!
とはいえ、まずは長谷川さんが生み出したあの巻き方を覚える必要があります。
プロの靴磨き職人が愛用する巻き方。汚れ落としとは異なって生地が伸びない磨き布に苦戦する来場者には…
もうひとりの靴磨き世界チャンピオンBrift H SAPPOROの林田さんも手伝ってレクチャーしてくれました!
独学巻だった私もついにデファクトスタンダードなスタイルを習得!
友人Zはすでに覚えていたようで手慣れた手つきでこのフォルムにたどり着いていました。
布だけ磨き手順1 布を水で湿らせます。
まずは指に巻いた磨きネル生地を水で湿らせます。
水滴を5滴程度たらし、そのあと手の平で5回たたきます。仕上がりの湿り気は濡れティッシュくらいが目安。
布だけ磨き手順2 ワックスを取る
次にワックスの上で布を2回ほど軽く滑らせて取ります。
かなり少な目でOK!
ワックスを塗った箇所が白くなります。
布だけ磨き手順3 水を1滴たらし磨く
ワックスを塗って白くなった箇所に水を1滴たらし、クルクルと軌道を描くように靴のうえでネル生地を動かすとドンドンと輝きが増していきます。
この1滴のおかげでワックスが革靴を覆う膜になるんだそう。
私は「皮革もワックスもすべてを極めた長谷川さんの説明は本当に納得感が強いなあ」とポイントポイントで感動していました。笑
※上記を取り上げたマニアックなワークショップも以前行われていました。
濡れティッシュくらいに湿った磨き布にワックス2回→靴に塗る→水滴落として磨く…を繰り返すとドンドンと靴のツヤが増していきます。
(もはや左右別物となってしまった友人Zの某MTO)
STEP9 水研ぎ
最後は水研ぎ。
ここで私は「水研ぎ」というものを本当に誤解していたことを知りました。
というのもこれまで水研ぎはワックスを使って鏡面磨きをする、いわば7~8の延長と考えていたのですが、まったくの別工程。それもかなり力を入れて水で磨き研ぐのコツ!ということ。
かなりグッと力を入れてこすってくださいね~!と言われ半信半疑でやり始めたところ・・・
とんでもなく輝いてきました。笑
(君のポテンシャルを引き出すのは久しぶりだよ…)
ビフォーアフター
ということでこちらがコードバンのオールデンフォーアナトミカのビフォーアフターです。
雪が降ることから冬期間履けてなかったのでバンバンブルームが出ており、さらに鏡面磨きはまったく施していなかったコイツが…
素敵エイジングをした革靴に生まれ変わりました!
春からまたよろしく!
まとめ
ということで本ブログ記事では、靴磨き界のスーパーレジェンドBrift H長谷川裕也さんの靴磨きセミナーの様子をご紹介しました。
靴磨きを0→1で事業にした生々しい話、そして直伝のレッスンと本当に充実した時間を楽しめました。長谷川さん、本当にありがとうございました。靴磨き家としての活躍をお祈り申し上げます!!
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