あの日、私は再来月に控えたロンパリ旅行の計画を練っていました。
家族も増えた中、限られた予算のなかでどう最大限に楽しむか。
頭をグルグルと働かせているとちょっと疲れてしまって、気分転換にメールボックスを開くとそこにはなにやら見覚えのある件名のメールが・・・。
やあ、ミウラさん。
お元気ですか?
ついさっきオールデンのアンラインドU-TIPが届いたよ!
希望していたサイズを押さえているので、あなたがまだ買う予定だったら連絡してね!
Anatomica Paris.
な、なんだってーーー!!
完全なる不意打ち。
遡る事2年前、私はカラー8のモディファイドラスト8.5Eサイズが欲しくてありとあらゆるオールデンサイトをチェックしていました。
しかし、2016年前後といえばコードバンが枯渇してレアカラーはおろかカラー8やブラックでさえほとんど流通しなくなったオールデンファンなら誰もが悪夢の時代と記憶しているであろう年でした。
どのサイトを見ても入荷未定。
もうほぼほぼ諦めていました。
そんな中、たまたま目にしたアナトミカの5610に不思議な魅力を感じ、次回入荷時の取り置きをお願いしていたのでした。
(正直すっかり忘れていた)
さて、私は海外旅行にいくときにあらゆる知恵を振り絞って免税額20万円のお小遣い(へそくり?)を調達します。もちろんすでに準備は万端です。無い袖を振るようなことはしません。
しかし、これを入手してしまうと半分以上が吹っ飛ぶぞ?
どうする、、、どうする?
・・・
Dear Anatomica Paris,
素晴らしい連絡をありがとう!
ぜひ購入したいと思っていますのでPaypalのアドレスを送ってください!
ミウラより
※ちなみに現在は個人輸入不可となってしまったそうです。キヨ様、貴重な情報を教えていただきありがとうございます!
いざ、開封の儀!
というわけで気づいたらフランスから北の大地の我が家に到着してしまった深緑の箱。
いざ開封の儀!
どうしてオールデンって箱を開けるときの楽しみが格別なんでしょう。
おや、なにやらお手紙とおまけっぽいのが入っていますね?
これはかなりワックスっぽいですねえ。後ほど開けてみます。
実はカラー8の純正ワックスは処分してしまっていたので嬉しい誤算!
そして日本人には決して再現できない趣のある筆跡でかかれたメッセージカードもカッコイイ!
おおぅ、久々にみました。このクリーム色のシューバッグ!
靴磨きにも使えそうな生地感なんですよね。
オールデン社のカードをよけると・・・。
見えてきました、革のダイヤモンド!
やっぱりオールデンは開封したときのテンションの上がり方が違います。
ワクワクドキドキの不思議な高揚感に包まれますねえ!
ALDEN Crown Stitch Derby Unlined Cordovan #8

ALDEN Crown Stitch Derby Unlined Cordovan #8
ということでこちらが今回フランスから直輸入したオールデンです。
- メーカー ALDEN(オールデン)
- 品番 5610
- アッパー Cordovan(コードバン)
- カラー #8(カラー8)
- ラスト Modified Last(モディファイドラスト)
- サイズ US8.5
- ウィズ E(幅広)
5610 ALDEN for Anatomica

ALDEN 5610 U-TIPアンラインドコードバン
実はコードバンを使った靴はすべて手放していましたのですが、やっぱりコードバンは良い!
まずはその特徴的な香り。
カーフとは全く異なるアッパーの質感。
さらには履いた後の独特なシワ感。
そして磨いた後の圧倒的なツヤ感はコードバンだけに許された特権です。
Anatomicaとオールデンの関係
出典:https://anatomica.fr/souliers.html
さて、ここでアナトミカとオールデンについて触れておきたいと思います。
アナトミカは1994年にピエール・フルニエ氏がパリで始めたセレクトショップです。
しかしただのセレクトショップではありません。
アナトミカは販売する服に着心地(フィッティング)の良さを徹底的に追求しており、お客さんには「アナトミカがオススメするサイズ、フィッティングを理解する」ことを強く求めています。
人体を覆う履物と衣類は構造上、元来着用するその人物を尊敬して形成される。即ち販売する商品は特別な形をしていて当然であり、多種多様な形とサイズに至る。ピエール曰く「ANATOMICAではマーケティング戦略を練ることは無い。ANATOMICAで唯一対象とされるのはスタッフを含めANATOMICAが推し進めるフィッティングを理解できる顧客だけであり、店舗スタッフが全ての商品に対して個々に採寸しそれを納得できる顧客だけである」
出典:http://anatomica.jp/history.html
そんな強烈ともいえるこだわりをもったアナトミカが唯一認めた本格靴こそが
米オールデン社のモディファイドラストという木型を使った靴なんです!
インソックはダブルネーム
それではAlden 5610のディテールをご紹介していきたいと思います。
まずインソックはアナトミカファンに嬉しいダブルネーム仕様。
Technically made for Anatomica by Alden。
(オールデンがアナトミカ専用に作ったぜ!)
タン裏はオールドスタイルなフェルト仕様
大抵の革靴はタンの裏側にはライニングと同じレザーを使用していますが、このALDEN5610ではまさかのフェルトを使っています。
ちょっと調べてみると古い時代の革靴に用いられていたディテールのよう。
ヴィンテージやミリタリーテイストの服を得意とするアナトミカならではの仕様ですね!
アンラインド
アナトミカがつくるオールデンの最大の特徴でもあるのがこのアンラインド仕様。
一般的な革靴はアッパーの裏側にやわらかいヌメ革やコットンライニングを施すのですが、なんとアナトミカでは軽くて柔らかい履き心地を優先するためにライニングをとっぱらってしまったのです!
個人的に先芯がどうなっているのかずっと気になっていたのですが、画像で確認できるとおりつま先の先芯だけはしっかり入っていました。
(だけどちょっと短め?)
珍しいクラウンステッチ
オールデンといえば縫い部分がもっこりと盛り上がったスキンステッチが有名ですが、このアンラインド仕様のクラウンステッチでは控えめな仕上がりになっています。
モディファイドラスト
オールデンの技術の結晶ともいえるモディファイドラスト。
矯正靴メーカーからスタートしたオールデンらしい「正しい歩行をサポートする」木型として知られています。
大きな特徴としては下記の3つがあります。
- 内側に伸びたアーコヒール。
- ギュッとしぼられた土踏まず
- 足指を自由にするボールジョイント先の広さ
くびれ過ぎている土踏まず
ギュッと絞られた土踏まずは何もソール形状だけではありません。
アッパーのころしといわれる土踏まず部分もこの通り。
とんでもないくらいえぐれています。
6アイレット
そしてモディファイドラストは土踏まずで締めて履くともいわれる木型なのですが、それを実現するのがこの6アイレットでしょう。
一般的な革靴は5アイレットが多いのですが、土踏まずを中心としたホールド感を強めるために6アイレットが採用されているようです。
実際に足を入れて靴紐を締めるとその効果を強く感じるんですよね。
土踏まずと甲周りはキュッと固定されるのですが、指先は自由になるので本当に歩きやすい!
ALDENらしい荒さも健在
ずれた積み上げアーコヒール
アメリカを代表する本格靴メーカーのALDENですが、、、
申し訳ないのですがその造りは基本的に英仏だとリジェクト扱いに近いものが殆どです。(笑)
たとえばこの積み上げヒール。アーコヒールと呼ばれる内側が長く正しい歩行を促す機能を持った珍しいヒールを使用しているのですが、性能とは反対にその積み上げは雑そのもの。
ここに段差ができたまま検品通るのはオールデンくらいですね。
飛び散る染料
そしてオールデンといえばこの染料がバッチリはみ出てるディテール(?)ですよね。
毎回思うのですが、そもそもコードバンって染色済みのものが供給されているはずなんです。
なぜさらに染料がしかもこの微妙な箇所についてることが多いのか?
誰か知っている方がいたら教えてください~。
ステッチ位置のずれ
まだまだ終わりません。
オールデンはこういったステッチ位置のずれも普通です。
クラウンステッチの先端とアイレット下部のステッチに注目してください。
左はまあ許容範囲かもしれませんが、右は思いっきりズレてます。(笑)
すべてを許せてしまうオールデンの魅力
かなり辛辣なコメントもしてしまいましたが、これらを含めてやっぱりオールデンなんですよねえ~。(笑)
なんというかこういったディテールがすべて完璧だったら逆にちょっと物足りない。
何を言っているかわからないと思いますがALDENってそういうブランドだと思うんですよね。
ブラックバージョンのALDEN 56107
最近12年前のオーダー品がアナトミカ札幌に届いたと知らせが耳に入りました。
その靴こそがブラックバージョンとなる56107。
相変わらず美しい出来栄え…そして価格はなんと20万円越え。
ですがほとんどのサイズがすぐに売り切れてしまったようです。
まとめ
ということで今回はAlden for Anatomica 5610の開封とディテールのご紹介でした。
改めてこのオールデンという靴の魅力を強く感じる今日この頃。
靴好きならやはり1足は持っていたいですね!(手放してわかるこの魅力)
そんな訳で次回はコードバン靴とは切ってもきれない「シワ入れの儀」に挑戦していきます。


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