チャーチ、エドワードグリーン、ジョンロブと革靴大国イギリスを代表するシューメーカーに触れてきた私ですが、最近とっても気になってしょうがないのがガジアーノガーリング(Gaziano & Girling)です。
以前までは英国最高級靴といえばジョンロブ(John Lobb)かエドワードグリーン(Edward Green)でしたが、今では誰もが認める第3のブランドとして名高いのがガジアーノガーリングです。
彼らのキーワードは「他のブランドには不可能だと思う靴を作る」こと。
一体どんなシューメーカーなんでしょうか?
Gaziano Girlingとは?
出典:https://www.theweek.co.uk/83920/best-foot-forward-gaziano-girling
革靴の聖地、ノーザンプトンの北東25kmにあるケタリングという街で2006年に誕生した英国靴業界のなかでは非常に若いシューメーカーです。
英国屈指のビスポークメーカー「ジョージクレバリー(George Cleverley)」で出会った若き職人2人が、「エドワードグリーン(Edward Green)」で再会した後、G&Gを立ち上げ。
歴史ある既存メーカーとは一線を画すビスポークシューズに意匠をふんだんに取り入れた既成靴は、立ち上げ当初から世界中の靴好きから高い注目を浴びていたそう。
そしてこのGaziano&Girling。立ち上げた二人が本当に凄い人たちなんです。
トニー・ガジアーノ(Tony Gaziano)
出典:http://savilerow-style.com/accessories/big-interview-savile-rows-tony-gaziano/
あのエドワードグリーンのビスポーク部門の総括責任者として名を馳せたのがトニー・ガジアーノ氏。
当初建築家を目指していた氏ですが肌に合わないと感じ、チーニーのジュニアデザイナーとしてキャリアをスタート。
その後エドワードグリーンで超名作ラスト202をつくったジョン・フルスティックの元でデザイナーとして活躍し、ジョージクレバリーでビスポーク技術を学んだそう。そしてまたエドワードグリーンに戻り、同社のビスポーク部門を率いた後に独立。
そんな訳でトニー氏は業界でも珍しいRTWとビスポーク両方を熟知した靴職人、そしてデザイナーなんですね。
エドワードグリーンでは現在の主力ラストのひとつ82や、元々はトップドロワー専用ラストとなる細身のスクエアタイプの808、そして888を開発した張本人でもあり、その卓越した才能は天才とも呼ばれています。
ガジアーノガーリングでは主にデザイン面を担当されているそう。
ディーン・ガーリング(Dean Girling)
出典:http://savilerow-style.com/accessories/big-interview-savile-rows-tony-gaziano/
同じく天才アウトワーカーとして有名だったのがディーン・ガーリング氏。
靴職人を父に持ち、わずか21歳の若さからビスポークのアウトワーカーとしてジョンロブ、フォスターソンやジョージクレバリー、エドワードグリーンという名だたるビスポークメーカーで活躍しました。
そんな唯一無二のバックボーンによって、すべての工程に細かく目を光らせることができることからディーン氏は靴の製造現場の品質管理を担当されているそう。
シューメイキング世界チャンピオンが在籍
G&Gのビスポーク責任者のダニエル・ウェーガン氏は靴づくり世界大会の優勝者。
他にも工場の各工程を支える職人は超一流ブランドでの経験豊富な名人ばかり。
独立する際、トニー&ディーン両名がその技術に惚れ込んだ職人たちに声をかけて集めたそうで、職人の半数以上がビスポーク経験者というRTWのシューメーカーとしては大変ユニークな構成になっているそうです。
※2019年末に退職されたみたいです。
ガジアーノガーリングの直営店舗はあのサヴィルロウに。
ガジアーノガーリングの直営店はロンドンにある紳士服の聖地サヴィルロウにあります。
出店地にはジャーミンストリートやバーリントンアーケードなど候補が色々あったそうですが、100年以上の歴史を持つライバル会社達と差をつけるために、あえて革靴で有名なジャーミンストリートではなく、サヴィルロウに出店したのは流石の一言。
見事狙い通りにテーラー帰りの顧客の導線を掴んでいるとか。
G&Gのつくる革靴、そして代表作について
- 履き心地の良さの徹底的な追及し、一般的な革靴に比べ履いてすぐに足に馴染むコンフォートな靴。
- 最上級の皮革素材を調達できるよう、常にフランスやスイスのタンナリーに直接足を運び、そのときそのときの最良となる革を使用。
- クラシックな英国靴をベースにイタリアのエッセンスが入った大変美しいプロポーションを実現。
ガジアーノガーリング(Gaziano & Girling)がつくる革靴にはこういったこだわりが詰まっているそうです。そんなG&Gの代表作をいくつかご紹介したいと思います。
アンティーブス(Antibes)
日本でGGといえばこのローファーが非常に有名です。
リボンを思わせるツイストしたサドルが目立ちますが、注目すべきはU部分とスプリット部分がすべてスキンステッチと呼ばれる大変難しい技術で作られているところでしょう。
さらにこれらの意匠を惹き立てるビンテージ風のラインブラウンカラーは、春や夏のジャケパンスタイルやデニムなどにピッタリと合います。
セント・ジェームス2(St James 2)
世界的にはこちらのモデルも人気だそう!
元はビスポークで人気だったデザイン「セントジェームス」のキャップ(つま先部分)とバンプ部分のバランスをさらにブラッシュアップしたモデル。
ガジアーノガーリングといえばこの美しいアデレートスタイルの靴を思い浮かべる方も多いかもしれません。
DECO
トニー・ディーン両氏がもっとも美しいと考える1920年代のアールデコ調の靴を表現したのがDECOラインです。
まさにGGの顔ともいえるこの最上級ラインは、2人の美学が詰まっているそう。
めちゃくちゃに絞り込まれたウェストラインに、見る人によっては細く感じるノーズ、素晴らしい色彩のパティーヌなど…一見、革靴というより工芸品のようにも見えてしまう大変美しい革靴です。
しかし全体としてみると素晴らしいバランス感の一足に仕上がっており、とくにビスポーク由来の履き心地はこれまでの既製品と一線を画す履き心地だそう。
クラシックライン
チャールズ皇太子が訪問されるタイミングで同王子のビスポーク木型をモチーフに新たに開発された最新のコレクションがクラシックラインです。
クラシックラインはラウンドトゥのR18とスクエアトゥのS45と呼ばれる2つの木型で構成されており、チャールズ皇太子がG&Gの工場見学に訪れた際にプレゼントされた靴が元となっているそう。
従来の英国靴に比べてシャープなシルエットが多いGGのなかでは、コロンとしたオールドイングリッシュシューズ色が強いシルエットが特徴で、アッパーは通常製品と同等ですが、底材や製法などをやや簡略したことにより価格を抑えたエントリーモデル。
ウィズはEXと呼ばれるEとFの中間のみの展開となっており、一般的に細めといわれるガジアーノガーリングのなかではやや異質の存在となっていますが、足の幅が広いミウラにとっては唯一の希望があるラストといえるのかもしれません(笑)
まとめ 靴作り職人が経営している唯一のシューメーカー
ということで今回は新進気鋭の英国シューメーカー「ガジアーノガーリング(Gaziano&Girling)」についてご紹介しました。
調べれば調べるほど、靴好きならばその魅力にグイグイと引き込まれてしまうエピソードばかり。
「現役の靴作り職人が経営している唯一の高級シューメーカー」というだけでもう気絶…。
まだG&Gを体験されていない方はぜひ一度足を入れてみてはいかがでしょうか。
(ちなみに私はすでに…)
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