皮革ハンドブックを買ってわかったことをシェアします【シューケアの謎に迫る】

シューケア大好きなミウラですが、以前からずっとほしかった一冊がありました。

いくつかの靴磨きの本を手に入れ、そして実践することで色々な経験を積んできましたが、どの本にも知りたい情報があともう一押し載っていなかったんですね。

「これはもう靴磨き(シューケア)の範疇を超えているのではないか?」

「これ以上は皮革自体を学ぶ必要があるのでは?」

そんなときに出会ったのがこの皮革ハンドブックでした。


皮革ハンドブックとは?

2005年に日本皮革技術教会が発刊したガチの学術書です。皮革の成り立ちからその特性、トラブル時の科学的側面からの対応データ、摩耗実験の結果や、代表的な革製品の製法や作り方まで網羅されたまさに革好き必見の一冊。

しかし、その価格の高さからかすでに絶版しており、さらにはAmazonにおいてはプレ値で販売されています。(このブログ公開時点で残り三冊)

日々様々なシューケアアイテムを試しながら、より良い靴磨きを追求しているミウラですが、いよいよシューケアメーカーの商品説明と自分の経験結果ではこの壁(何の壁?)を突破できないと感じていました。これ以上は皮革の科学的知識が必要だと。そんな訳でどうしてもアカデミックな知見を得ることを我慢できず定価8,400円のこの学術書をプレ値上等で入手したのでした。

皮革ハンドブック

(樹芸書房) 単価8,400円(税込み)

革の特性要因として、皮を構成するコラーゲンから製革工程、革製品との関連性、革の力学・熱・水・光・疲労・静電気・音響特性などを取り上げています。革製品の製法と特性として革製品の企画・設計(バッグ、革衣料、ベルト、椅子、スポーツ用品、靴など)を解説しています。
革製品の消費性能では、革製品の取り扱い方、手入れ・保管など、革製品の品質への対応の仕方と苦情事例のデーター集、革および革製品の安全性への取り組み(品質安全性や環境ラベルなど)、革の伝統と未来、革の情報と世界など幅広く収録しています。

http://www.hikaku-kyo.org/htdoc/syuppan.html

皮革ハンドブックの目次

  1. 革の特性要因
  2. 革製品の製法と特性
  3. 革製品の消費性能
  4. 革製品の品質への対応の仕方と苦情事例データ集
  5. 革および革製品の品質保持
  6. 革の伝統と未来
  7. 革の情報の世界
  8. 革のすばらしさを考える座談会

読んでわかった革靴に関する謎

皮革ハンドブック

ついに手に入れた皮革ハンドブックですが、ガチの学術書なので正電荷とか塩基性側鎖とか普段触れない単語が大量頻出しており、純度100%文系のミウラが読み解き尽くすまで相当な時間がかかることは明白でした。

とはいうものの、毎日読み進めることであいまいに感じていた革靴およびシューケアに関する点が少しずつ明らかになってきたのです。

そんな訳で今回は革靴とシューケアに関するところでわかったポイントを私の考えを合わせてシェアしていきたいと思います。

皮革はコラーゲン繊維の集合体

意外としっかり認識していなかったのがこの事実です。

  • 皮は乳頭層(毛穴部分の層=銀面層)、網状層(銀面の下にある床面層)、そして皮下組織からなる。
  • 皮は鞣されることで革となり腐敗しなくなる。
  • 革というのは皮から皮下組織を取り除き、乳頭層と網状層が鞣されたものを指す。
  • 皮革はコラーゲン繊維の集合体であり、一種の織物と考えることができる。
  • 銀面層は網状層より緻密なコラーゲン集合体となっている。

http://jalt-npo.jp/なめしの意味、革の歴史、製法、革の種類と一般特性

鞣された革と皮の違い

基本中の基本なのかもしれませんが、皮と革は一体どこで分かれるのかがようやくわかりました。

  • 皮のコラーゲン繊維の間には水分が介在している。
  • 水分がなくなる(=乾燥する)と皮は硬化する。
  • 革はコラーゲン繊維を鞣し剤と結合させたものと考えることができる。
  • 鞣し剤は乾燥時の硬化を阻害する。
  • 鞣し剤と結合することで革は一般的な製品として使用しやすくなる特性を得る。(銀面状態の改善や耐汗性、柔軟性、染色性、耐水性など)

履きシワとクラックの違い

履きシワもよーく見ると革に亀裂が入っているように見えますよね。履きシワとクラック、一体どこからがクラックでどこまでが履きシワなのでしょうか。

  • 革靴を踏み込むと折り曲げられた革に履きシワが形成される。
  • コラーゲン繊維の状態がある程度保たれたまま一定の方向に癖つけされたのが履きシワと考えることができる。(おそらく多少は破断している)
  • コラーゲン繊維が完全に破断した状態がクラック。

この結果から私がブログで紹介していた「新品の革靴を履き下ろす前にシュプリームクリームデラックスを塗りたくる」のがなぜ効果的だったかわかりました。コラーゲン繊維の間に水分にシダーウッドオイル(油分)、そして保湿効果のあるラノリンを充填できるからなんですね。

初心者向け!革靴を履き下ろす際にやるべきたった1つのこと。
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皮革の栄養とは

前から気になっていたシューケアメーカーが使う「栄養」という表現、ようやく一つの答えを見つけることができました。

  • コラーゲン繊維は水分や油分により繊維間の抵抗を減らすことができる。
  • コラーゲン繊維同士が膠着すると硬化が発生し、伸張性や引き裂き強度、曲げ特性などが低下し、結果として革の破断(クラック)などに繋がる。
  • 以上のことから皮革の栄養とはコラーゲン繊維間に水分や油分、その他成分を含ませることを指すと考えることができる。
  • 革靴として歩くことで日々屈曲する動作が発生する。この動作によりコラーゲン繊維は徐々に摩耗し結果的に破断する。これを少しでも遅らせるのがシューケアにより油分や水分その他成分をコラーゲン繊維間に補給することと考えることができる。

革の呼吸の真相

  • 「革の呼吸」というのは良く使われる表現だが、これはコラーゲン繊維間の毛細現象による吸放湿性を指していると考えられる。表面が樹脂でコーティングされたガラスレザーは確かに蒸れやすい。
  • とはいえ化学繊維で作られたメッシュ素材などには到底適うものではないので革の吸放湿性自体に過度の期待はするべきではないと思われる。

ろう分(ワックス)の役割

  • 銀面上にワックス層を形成することでワックス層は蓋となり、コラーゲン繊維間の水分の蒸発や油分の揮発を阻害する効果および外的要因により銀面の損傷を防ぐ効果が期待できる。
  • しかし、ライニング側から水分が蒸発したり油分が揮発することから、そのままにするとアッパー側から靴クリーム等を使用しても充填効率が極めて低くなることが予想できる。
  • 以上のことから、屈曲部分に過度のロウ分(ワックス)を使用するのはクラックの促進に繋がる可能性が高い。
  • 一方でつま先部分については屈曲が発生しないため、コラーゲン繊維が断裂される動きが発生しないことから、保護膜や審美的観点からもワックス層を形成するのは合理的と考えることができる。ただし乾燥自体は発生するので頻度を落としてシューケアする必要はある。

まとめ

この記事の見解はミウラ個人がこれまでの経験と皮革ハンドブックを読んで考えたものであり、皮革技術協会の見解では決してありません。(理解が浅く、正しく読み解けていない可能性ももちろんあります)

正直言って本一冊に出すには高い金額でしたが、私にはその価値がありました。革靴のシューケアという点でこれまで実際に経験してきたことがなぜそうなるのか。心の底から腑に落ちた気持ちです。

とはいうものの、全てを読了するまではまだまだ時間が必要な圧倒的ボリューム。リラックスタイムのお供は当分変わらなさそうです。(笑)

そんな訳でもう一歩どころか二歩くらい進んだシューケアを考えてる方はぜひ手に入れてみてはいかがでしょうか。(高いですが)