今回は「イギリスのロンドンで黒いフルブローグを探せ!【憧れのトニーブレア首相の革靴】」の続き記事となります。
ミウラが選ぶ「最高のブラックフルブローグ」に見事選ばれたのは…
そう!なんと英国のシューメーカーではなく、フランスの老舗J.M.Westonの376フルブローグでした!
ジェイエムウェストン 376フルブローグ
メーカー | J.M.Weston |
製造国 | フランス |
製品名 | 376 Full Brogue |
ライン | Great Classic |
ラスト(木型) | Last 11 |
サイズ | 8/E(UK8.5E) |
アッパー | ブラックカーフ |
ということで今回手に入れたのはJMウェストンの376フルブローグです。
普通の靴好きならば「あ~、ウェストンね。いい靴選んだねー。」となるでしょうが、私のような靴マニアならこう思うはず。
「え、ウェストンの376って廃盤になってるし、ヒストリカルオーダーも今やってないよね。もしかしてわざわざ標準仕様でスペシャルオーダーしちゃったの?」と。(思わないかも)
奇跡的に手に入れた経緯
2017年に再販されたっきりのヒストリカルモデル達。
画像出典:https://www.facebook.com/jmwestonofficieljp/
そう、この376フルブローグはすでに廃盤となっており、つい数年前に再販イベントが行われて以来、スペシャルオーダーでしか購入できない幻のフルブローグとなっています。
ちなみに日本でスペシャルオーダーすると30万円近くします。677ハントダービーと同じ価格です。何かが間違っています。(笑)
この376との出会いは、先日アップしたイギリスのロンドンで黒いフルブローグを探せ!【憧れのトニーブレア首相の革靴】で、1店舗目に訪れたJ.M.Weston Jermyn St.店でした。
イギリスを代表する全ての高級紳士靴店で試着を終えたミウラ、もっとも履き心地が良かったのはウェストンのLast11だったのですが、376はもちろん販売されていません。
旅行中にまだ一足も購入してなかったですし、当時はとんでもないユーロ安真っただ中。
それなら記念にスペシャルオーダーしてしまおう!(靴欲のネジは遥か彼方へ)と考え、オーダーの仕様などを妄想しながらJMウェストン ジャーミンストリート店に戻ったのでした。
早速相談してみると…。
「オーケー!サイズと色は? 黒の8/E? わかった、ちょっと待ってて!」
むむ…?
「…ミスター、本国に在庫あったよ!」
在庫あったーーーー!!!(笑)
ということで旅先での特別感も検討したのですが、やはり「多少の仕様の差+思い出補正<価格」となり、すぐに購入と相成りました。
しっかし、なんで3年以上前に廃盤した靴があるんだろう…。
圧倒的に美しいフランス産ブラックボックスカーフ
そんな訳でこの魔訶不思議な靴のディテールを見ていきたいと思います。
まず初めに驚いたのは圧倒的に素晴らしい品質のブラックボックスカーフ。
以前はJMウェストンが所有していたタナリー、デュプイ社のものです。現在はあのエルメス社の傘下に入っているのはもはや周知の事実といったところ。
見ても触っても適度な厚みに傷一つなく、フラワーと呼ばれる細かいシボ感が綺麗に出ている銀面、そして曲げたときのしなやかさはまさにウェストンならでは極めて高いレベルにあると言えます。
これたぶん…、3年以上前に製造されてませんね。(笑)
おそらくはヒストリカルモデルをキャンセルした人がいたんじゃないかと今になって思っています。
素晴らしいバランスのブローギング
376のもっとも特徴的な部分はこのブローギングのバランスではないでしょうか。
英国靴のようにカジュアルさを押し出す強めのブローギングではなく、フランス流に再解釈したかのような柔らかさが入った上品なバランス感にガッチリやられてしまいました。
靴は履き心地はもちろんですが、見た目も大事。そう強く思います。
ブリティッシュなハーフムーン仕様
通常羽根をつま先部分はカンヌキと呼ばれる縫い合わせがありますが、トラディショナルな英国靴によくあるディテールとしてこの別名ハーフムーンとも呼ばれる意匠が採用されることがあります。
ウェストンの376もその例にもれずハーフムーン仕様。こういった小さなディテールからも下手な英国靴より英国らしさが垣間見えますね。
360°ウェルテッド仕様
さらに驚くべきはフォーマルシューズにも関わらずダブルウェスト仕様なところ。
一般的にフォーマルとされる内羽根のシューズはソールとアッパーを繋ぐウェルトと呼ばれる部材はカカトから先だけに巻かれる270°ウェルテッド仕様になっています。(上画像)
これは見た目からもシャープでエレガントな雰囲気が出るためですが、JMウェストンの376はまさかの360°ウェルテッド仕様。カカト側までビッシリとウェルトが巻かれています。(下画像)
元々のフルブローグシューズが雨用の靴として生まれたこともあり、360°ウェルテッドがある意味において正しい意匠であると言えます。
しかし、昨今ジョンロブやチャーチ、しいてはエドワードグリーンなどイギリスを代表するシューメーカーにおいても、フルブローグについてはストレートチップなどのフォーマル側のビジネスシューズのひとつとして270°ウェルテッドを採用しています。
そんな中で、ウェストンにおいては300ストレートチップと310セミブローグは270°ウェルテッド、そして376フルブローグでは360°ウェルテッドという設定になっています。
モノづくりの姿勢として、基本に忠実なデザインというものに非常に強いこだわりがあるんだなあと感じざるを得ませんね。
タナリーバスタン製のシングルレザーソール
最後はカラス仕上げされたシングルレザーソールです。
こちらもアッパー同様フランスのタンナー、バスタン社製のもの。
固く、そして粘り強いこのレザーソールはもちろんオーク(樫)によってなめされたオークバークというタイプです。
これまではウェストンだけに供給されていた特別なソールでしたが、最近は日本でウェストンの純正修理を引き受けるスコッチグレイン社のハイエンドモデルでも採用されているそうな。
LAST11
376フルブローグに採用されている木型はLast11と呼ばれるもので、ウェストンでは300ストレートチップや310セミブローグで採用されているドレス用の木型となります。
縦幅はウェストン独自の4mm刻み、横幅はA~Fまでの6種類が常時生きた在庫として展開されており、本当に足に合った一足を選びやすい木型と言えますね。
私がもしストレートチップのオススメを聞かれたら、間違いなくウェストンの300ストレートチップを勧めます。
そんなアツい気持ちがこもった記事はこちら。
J.M.Weston 300ストレートチップのサイズ感【ラスト11】
木型の特徴としては甲は気持ち高め、そして気持ちロングノーズという絶妙なバランス感です。
適度に張り出したコバは何度でもオールソールに耐えてくれそうなのが嬉しいポイント。
シューツリーは041 or 022
376フルブローグに合うシューツリーは日本とヨーロッパで異なるようです。(笑)
ヨーロッパでは180ローファーや641ゴルフで使用される041タイプ。
日本では598ハーフハントなどに使用される022タイプです。
どちらもピタリとフィットしていました。これらはつま先の形が結構変わるのですが、Last11では心材が入っている箇所のため、ほとんど影響がないみたいです。
ビスポークのような履き心地
ラスト11がもっとも特徴的なのはビスポークシューズを思わせるその履き心地でしょう。
JMウェストンならではの縦と横がピタリと足にフィットした靴というだけで素晴らしい履き心地なのですが、もっとも特徴的なのは立体感を感じる中底です。まるで控えめなビルケンシュトックのように足裏にピタリと吸いつくような感覚。
ビスポークシューズを履いた時の感覚とほとんど一緒でビックリしました。
そんな376がこれからどう馴染んでいくのかは自分の靴ながら大変興味深いところです。
(なぜミウラがビスポークシューズの履き心地を知っているかは後日記事にて)
スペシャルオーダーバージョン
この376フルブローグをスペシャルオーダーしていた友人の一足もついでにご紹介したいと思います。
アッパーは同じくブラックカーフ。
ライニングは日本では展開されていないブリック(オレンジ)です。
つま先にはウェストンオリジナルスチール。
カカトには標準装備されているラバーチップです。
スペシャルオーダーの場合、クリッキングは手作業となるようです。
そのせいか、ボックスカーフの中でももっとも薄くて繊細な部分が使用されているように感じますね。
スペシャルオーダーではこんなことも可能です。
そう、先述していたウェルト部分がダブルではなくシングルウェルトとなっており、ドレッシーに仕上げています。
サイズは7C。
エドワードグリーンのUK6.5(ラスト32 )とほぼ同じ長さと横幅です。
ちなみに価格ですがオーダー当時は900€前後でしたか、価格改定後は1200€程度だそう。
日本価格が147,000円(ヒストリカルオーダー) or 30万円(スペシャルオーダー)の靴が、わずか900€で好きな仕様で注文できるなんて本当すんごい状況だったなとしか言いようがありません。(笑)
※しかもシューツリー付!
J.M.Weston 376 Full Broguesのまとめ
そんな訳でミウラ的最高のブラックフルブローグはJ.M. Westonの376フルブローグでした。
最高の皮革素材で作られた最高にトラディショナルで最高に足にフィットした一足。
これからの時間を出来るだけ長く共に過ごしていければいいなあと思ってなりません。
ぜひぜひ皆さまも自分ならではの最高の一足を追い求めてみてはいかがでしょうか?
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