英国靴チャーチ(Church’s)にハマってはや数年。
ときには直輸入、ときには表参道、ときには本国イギリスでと色々な場所でこの素晴らしいシューズ達を購入してきました。
英国老舗ブランドとして名高いチャーチ(Church’s)ですが、実はPRADAグループということもあり近年同社が発表する新作モデルのエレガントさは特筆すべきものです。
従来のモデルについても野暮ったいものはほとんどなく、どのモデルも英国老舗ならではの上品な雰囲気を漂わせています。
一方で、チャーチ(Church’s)は一般的に”質実剛健”と呼ばれ、観賞用、あるいは大事な場所で履くような靴というよりも、普段使いでこそ真価が発揮されると評判のブランドです。
とくに近年の主力ラスト(木型)となるラスト173は素晴らしい出来栄えで、数十年間全世界でベストセラーとなっていたラスト73を現代風にアレンジしたこの木型は履き心地も見た目も非常に高いレベルでまとまっていると言わざるを得ません。
私自身ラスト173を用いた靴は、用途や色別に何足か所有しており、日々の生活の中で大活躍しています。
前々から少しだけ気になることがありました。
・・・実はラスト173は2種類あるのでは?と。
製法と外羽根と内羽根について
とはいうものの、まずは製法や靴の羽根についておさらいします。
グッドイヤーウェルト製法のおさらい
英国の代表的な製法グッドイヤーウェルトで作られる革靴は必ず木型に革(アッパー)を吊りむ工程が入ります。※木型に革を合わせること。
これが木型。英語圏ではラスト(Last)と呼ばれます。
オーダーメイドだとこの木型から作っていきますが、既成靴だとサイズ&ウィズ別に大量生産された木型を利用します。
そしてこちらの一番下が吊り込み直後の革靴。
見ての通り、木型にアッパーが吊り込まれています。
このため、同じサイズの同じラストで作られた革靴は原則同じ履き心地なんです。
チャーチ(Church’s)の外羽根、内羽根のおさらい
チャーチ(Church’s)では一般的な革靴同様に外羽根と内羽根の2種類の靴があります。
※他にもモンクストラップなどもありますが、とりあえずは2種類ということで。
左側が内羽根、右側が外羽根となります。
パッと見わからないと思いますが、紐を通す部分の革が外付けになっているかどうかで見分けることができます。
外羽根、内羽根の履き心地の違い
基本的には外羽根のほうが見た目通りに調整が効きやすいタイプです。カントリー用などによく使用されるタイプということもあり基本的にはカジュアル用となります。
内羽根のほうは木型を純粋に再現するタイプですね。外羽根よりも調整は効きづらいものの足と木型(ラスト)があったときのフィット感は素晴らしいですし、何よりフォーマル用途には基本的には内羽根一択と言っても過言でありません。
ラスト173は内羽根と外羽根で大きさが違う?
さて、おさらいの結果
同じ木型で同じサイズの靴の履き心地は変わらない
という結論に行きつくのが至って普通のことなのですが、実は以前からチャーチにはこういうキーワードが数々のウェブサイトや掲示板で提示されていました。
「グラフトンは作りが大きめ」
「グラフトンはデカめ」
「グラフトンはサイズ感が異なる」
チャーチ(Church’s)のグラフトンとは?
グラフトン(Grafton)とはチャーチの誇る名作の一つで、外羽根フルブローグの傑作です。
カントリーライクなブローギングを分厚いダブルソールと雨雪に強いストームウェルトをグルッと巻いて支えたその姿は”革靴界の重戦車”と呼ばれるほどです。
実際に私も1足所有しており、その圧倒的走破性は荒天の際には非常に活躍しています。
このグラフトン(Grafton)に私が足入れした時、感じたのが「少しだけ大きい気もするなあ?」という点でした。
同ラスト、同サイズ、同ウィズなのになぜ?
ということで今回は、私が持っているチャーチ(Church’s)の同ラスト、同サイズ、同ウィズで外羽根と内羽根で比較していきたいと思います。
今回、比較に使うのは上の2足です。
・チャーチ(Church’s) グラフトン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
・チャーチ(Church’s) チェットウインド(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
全体を比較
まずは上から全体を眺めてみます。
そもそも論として、アウトソールに関してはストームウェルトが付いて入る分、グラフトンが確実に大きくなりますから、踵の履き口を起点に並べています。
パッと見た目はほぼほぼ同じ大きさのため、履き心地に差が生まれるような点は見つけることができません。
1つだけ気が付くとすれば、履き口の広さです。
内羽根のほうが明らかに広い!
カントリーシューズの方が広めに取るようなイメージがありましたが、実際にはフォーマルシューズとなる内羽根のほうが履き口が広く作られていました。
そしてなぜ履き口の広さに差が出るのかと考えるとその理由は羽根の位置にあることがわかります。
内羽根に比べて、外羽根の位置は1段高い場所に付いてるんですね。
もしかしたらこの分が甲の締め付けに多少なりとも影響しているのかもしれません。
念のため別モデル同士でも比較
左がチャーチ(Church’s) ストラットン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
右がチャーチ(Church’s) コンサル(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
これを見る限り、履き口の広さと羽根の位置については、羽根の仕様により決定されていることがわかります。
ヒールカップを比較
次にカカトをホールドするヒールカップを比較します。
良く「グラフトンはヒールカップが浅め」というワードも聞きますが、本当のところはどうなんでしょうか。
こちらも先ほど同様に靴の仕様に差があるので調整しています。
チェットウインドはシングルのラバーソール、グラフトンはダブルのラバーソール(ダイナイトソール)のため、足の接地面の高さに差があることから、チェットウインドの高さをグラフトンに揃えています。
揃えてみるとヒールカップの大きさに差は無い事は一目瞭然ですね。
トゥキャップ付近を比較
最後にトゥキャップ付近を比較していきます。
パッと見の寸法が一緒なのに履き心地に差を感じるのであればこのあたりが原因の可能性が大でしょう。
とりあえずはまたも高さを調整しています。
ダブルソールとシングルソールは本当に高さに差が出ますね~。
トゥキャップ部分については写真上ではあまり差が見えづらいのですが、実際には明らかにグラフトンのほうが大き目となっています。
こちらのショットだとトゥキャップ部分の容積の差がわかりやすいと思います。
このまま1つずつ寸法を測っていきます。
トゥキャップ部分の比較
チェットウインド(last173内羽根)は約12.5cm
グラフトン(last173外羽根)は約14cm
いよいよ数値的な差が表れてきました。トゥキャップ部分は見た目通り、グラフトンのほうが広いようです。
ボールジョイント部分の比較
チェットウインド(last173内羽根)は約16cm
グラフトン(last173外羽根)は約16.5cm
ボールジョイント部も同様にグラフトンほうが広い。ストームウェルトのせいで完璧に同じ条件で測ることは出来ていませんがその誤差を含めても明らかにグラフトンのほうが大きいですね。
甲部分の比較
先ほど、内羽根と外羽根では羽根の位置が異なるということがわかりましたが、念のため、甲周り部分も測ってみることにしました。
並べてみるとシューホール1つ分ズレていることがわかったので外羽根は2つ目、内羽根は3つ目のシューホール位置で測ります。
チェットウインド(last173内羽根)は約20.5cm
グラフトン(last173外羽根)は約21cm
やはりグラフトンのほうが大きい・・・。本当に同じ大きさなのであれば、外羽根が外に付いて入る分を踏まえても1cmの差は出ないように感じますね。
全体を横から比較
ここまでの結果を基に改めて横からの図を見ると、この2つのモデルは同ラスト同サイズ同ウィズにも関わらず、靴の容積について差があることがよくわかります。
今回使用した靴をもう一度比較
- チャーチ(Church’s) チェットウインド(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
- チャーチ(Church’s) コンサル(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
- チャーチ(Church’s) ストラットン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
- チャーチ(Church’s) グラフトン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
- チャーチ(Church’s) チェットウインド(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
- チャーチ(Church’s) グラフトン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
- チャーチ(Church’s) コンサル(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
- チャーチ(Church’s) ストラットン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
- チャーチ(Church’s) グラフトン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
- チャーチ(Church’s) ストラットン(last173、サイズ80、ウィズG)外羽根
- チャーチ(Church’s) コンサル(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
- チャーチ(Church’s) チェットウインド(last173、サイズ80、ウィズG)内羽根
結論:Church’sのGraftonが大きめなのは本当だった!
今回、色々と比較する中でチャーチ(Church’s) の外羽根と内羽根については、下記のことがわかりました。
- チャーチ(Church’s) の外羽根は、内羽根に比べてトゥキャップまでの容積が広い!
- チャーチ(Church’s) は外羽根と内羽根で履き口の広さが変わる!
以上のことから、内羽根モデルしか持っていない、あるいは外羽根モデルしか持っていない場合は新しくチャーチ(Church’s) の靴を迎えるにあたって試着は必須と考えてよいと思います。(通販で買ってしまうと失敗する可能性も)
おそらくFフィットとGフィットの狭間くらいの足の方は、内羽根(コンサルなど)をGフィットで履いているのであれば外羽根(グラフトンなど)はFで良いかもしれません!
私自身はそもそも幅広なのでFでもGでもジャストフィットです。もちろんほんの少しですがGのほうが大きくは感じています。
ということで、この記事が少しでもチャーチ(Church’s) 好きの方に役立つことを願っています。
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